美濃加茂市長事件、裁判所職権証人尋問を台無しにした”ヤメ検弁護士の資料送付”

本日(5月23日)、美濃加茂市長事件控訴審で、贈賄供述者中林の証人尋問が行われた。

今回、控訴審において裁判所が職権で証人尋問を行うという異例の措置が行われた趣旨が、中林自身の裁判で弁護人を務めた(が、今は中林と全く関係のない)ヤメ検弁護士の信じ難い行為によって、全く無に帰してしまったことが明らかになった。この弁護士は、検察内部の協議のことまで検察官から知らされていたと一審判決で指摘された「検察協力型ヤメ検弁護士」だ。

今回の中林の証人尋問は、通常の一審での証人尋問とは異なり、控訴審裁判所が、事前の記憶喚起などを経ないで、中林の現時点での「生の記憶」を確かめるために実施されたもので、そのような尋問の目的から、裁判所は、検察官に「証人テスト(証言内容について事前に確認して打合せを行うこと。検察官がこれまで多くの事件で用いてきた。)は控えてもらいたい」との異例の要請を行った。また、「記憶喚起のために事前に資料を送付すべし」との検察官の意見も退け、簡略な尋問項目等を送付するのみにとどめ、詳細な資料提示は、公判廷での証人尋問において行う方針が示されていた。

ところが、今日の中林の証言によれば、融資詐欺・贈賄の罪で服役中、今回の証人尋問の実施について裁判所から正式の通知を受ける前に、中林自身の裁判で弁護人だった東京の弁護士から、尋問事項に関連する資料として、贈賄に関する捜査段階の供述調書と、藤井市長に対する一審無罪判決の判決書(通常、その事件の検察官・弁護人などの当事者以外の者が入手できるものではなく、判決要旨も、報道関係者に、報道目的に限定して配布されるのみであり、藤井市長事件と関係のないこの弁護士がどのような方法で入手したかは不明である)を受刑中の刑務所に送ってもらい、事前に読んだ上で、本日の証人尋問に臨んだとのことだった。なぜそのような資料を元弁護人の弁護士から送ってもらったのか、弁護人から質問されても、曖昧な証言に終始した。

結果として、中林は、藤井市長の一審での証人尋問とほとんど同じ証言を行った。その内容のほとんどは、中林が入手した資料に書いてあることであり、今回の中林の証人尋問の実施の目的の大半は損なわれることになってしまった。

尋問項目は、裁判所から中林にあてた証人尋問決定書に添付されて事前に示されているので、捜査段階の供述調書と、一審での中林の証言内容が詳しく記載されている一審の判決書を入手していたのであれば、中林にとって、一審での証言内容を控訴審の公判廷で繰り返し証言することは容易だった。

一審判決では、中林が証人尋問に臨むに当たって、検察官と相当入念な打合せをしていたことで、中林が客観的資料と矛盾がなく、具体的かつ詳細で不自然かつ不合理な点がない供述をすることは自然の成り行きだ、とされた。今回の控訴審での中林の証人尋問においては、一切の「予備知識」も「打合せ」もなく、中林の現在の記憶に基づいて証言を行わせることが最大の目的だった。【検察にとって「泥沼」と化した美濃加茂市長事件控訴審】でも述べたように、中林の証人尋問によって、中林の虚偽供述の動機の真相が明らかになるかもしれないという、検察にとって極めて厳しい状況になっていた。

ところが、検察官が控訴審で中林の証人尋問に関して強く求め、裁判所が応じなかった「事前の証人テストの実施」「記憶喚起のための事前の資料送付」が、中林の弁護人だった弁護士の全く不可解な行動によって、実際にはそれを行ったのと同様の結果になったのだ。

なぜ、中林の弁護人だった弁護士が、検察を救済するような行動に出たのか。余りにも不可解だが、少なくとも、「贈賄供述者が一審と同様の証言を行った」と単純に表現できる状況ではないことは明らかだと言えよう。

 

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美濃加茂市長事件、裁判所職権証人尋問を台無しにした”ヤメ検弁護士の資料送付” への1件のフィードバック

  1. 裸の王様 より:

    裁判長が検察に対して行なった検察から中林証人への情報共有を禁じる異例の要請を姑息にも
    身内の弁護士を迂回することで掻い潜ろうとしたものですね。リーガルマインドの欠片も感じません。
    裁判長はそのプライドに懸けて、検察と対峙し、検察に協力したヤメ検弁護士を喚問し資料の
    入手ルートと送付に至った経緯とその趣旨を究明することでしょう。
    検察は墓穴を掘りましたね。

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