診療所違法捜査、岐阜県警の許し難い「ノットリリースザボール」

前回のブログ【「弁護士たる政治家」としての橋下徹氏への疑問】で、橋下徹氏が、維新の党執行部を批判している理屈がデタラメであること、その「弁護士たる政治家」としての姿勢に重大な問題があることを指摘して厳しく批判したが、維新の党に提出した法律意見書に対して(なぜか私の名前を出さずに)批判する一方で、ブログに対して全く反論してこない。

昨日からは、美濃加茂市長事件控訴審での検察との戦い(【美濃加茂市長事件控訴審、事実審理開始で重大なリスクを抱え込むことになった検察】)、診療所つぶしの違法捜索事件での岐阜県警との戦い(【岐阜県警違法押収事件の背景に、県・国による「診療所つぶし」】)の戦線に復帰した。

美濃加茂市長事件の方は、10月初めの異動で、村山浩昭判事が裁判長となった。

新たな裁判体となったわけだが、気を引き締め直し、この事件で警察・検察が捜査・公判で一体何をやってきたのか、無実・潔白の市長を逮捕し、美濃加茂市民の代表を葬り去ろうとしたのはなぜなのかを解明すべく、弁護人として、徹底した立証を行っていく。

一方で、岐阜県警の診療所等に対する違法押収事件の方は、岐阜地裁で、警察の押収処分の一部を違法だとして取り消す異例の決定が出てから、間もなく3か月になるが、岐阜県警は、いまだに、数千点のカルテを含む膨大な書類のほとんどを「留置の必要がある」などとして抱え込んだまま、被疑事実とされた罰金20万円の医療法違反事件の捜査については、被疑者の取調べすら行われず、全く動きもない。

この捜索は、極めて軽微な被疑事実で、必要性も全くないのに、関係するすべての事務所ばかりか、関係者の自宅も含めて11か所において、明け方まで「家探し」するという異常なやり方だったことに加え、そもそも、その「医療法違反」とされている被疑事実が、犯罪の構成要件に該当しないことを、弁護人として、早い段階から指摘してきた。

要するに、「医療法」における診療所等の「管理」に関する規定は、診療所等の開設者(本件で言えば、社会福祉法人徳雲会)に対して、資格ある医師に診療所を管理させることを義務づけている規定であり、違反に問われるとすれば「開設者」なのに、他の診療所の管理者となっていた「医師」が「別の診療所を管理した」という事実を犯罪事実ととらえ、医師を被疑者として捜索を行っているのである。

我々は、そのような医療法の法律解釈について所管官庁の厚労省に照会し回答を求めたところ、我々の解釈が正しいとの回答があった。

それによって、捜索の根拠自体がないことが明らかになったとして、岐阜県警に以下のような文書を送付して、押収物すべてを速やかに返還するように求めた。

犯罪構成要件に該当しない被疑事実による押収物の返還要請

貴県警生活安全部生活環境課及び羽島警察署は、本年8月6日夕刻から7日未明にかけて医療法違反の被疑事実で社会福祉法人徳雲会関連施設、同法人理事長、職員の自宅等11箇所に対する捜索差押を実施し、数千点に上る診療録等大量の書類等を差押えた。

同押収物の一部については、8月21日、岐阜地方裁判所の決定により、同県警作成の押収品目録記載の235点について、押収が違法であるとして押収処分が取り消され、既に返還済みであるが、その余の押収物については、ごく一部が還付されたほかは、今なお、留置の必要があるとして、押収が継続されている。

貴県警が捜索差押の根拠とした医療法12条違反の被疑事実は、

被疑者らが共謀の上、診療所Aにおいて、平成25年12月27日から平成26年1月21日までの間、同Aクリニックの管理者として岐阜保健所長に届出している医師が管理することなく、実質的な管理を診療所Bの管理者として届け出されている他の医師が行い、もって診療所を管理する医師が無許可で他の診療所の管理を行った

とのことであり、診療所を管理する「医師」が他の診療所の「管理を行ったこと」を犯罪事実ととらえるものである。

しかし、医療法における「管理」に係る規定は、診療所の「開設者」に、「資格ある医師等に管理をさせる」ことを義務づけるものである。「開設者」がその義務に反した場合に違反が成立することはあっても、「医師」等が「管理を行ったこと」について違反が成立する余地はなく、捜索差押の根拠とされた被疑事実はそもそも犯罪構成要件に該当しない。

このことを、当職らは、再三にわたって指摘してきたところであるが、今般、当職らが、医療法を所管する厚生労働省医政局総務課に対して行っていた照会に関して、添付書面記載のとおり、「他の診療所の管理者となっている医師が診療所を管理した事実があったとしても、当該管理を行った医師が違反に問われるものではない」旨回答があった。上記捜索差押で被疑者とされていた「医師」2名は、当職らが指摘していたとおり、上記医療法の規定による違反の主体にはなり得ないことが明らかになった。

なお、上記捜索差押の被疑事実においては、両罰規定の適用として、社会福祉法人徳雲会も被疑法人とされているが、被疑者とされる「医師」2名が違反行為の主体となり得ない以上、同法人も被疑法人とはなり得ないことは言うまでもない。

上記厚労省の回答から、貴県警が徳雲会および医師2名に対して行った捜索差押は、犯罪構成要件に該当しない被疑事実に基づく違法なものであることが明白になったのであるから、貴県警において保管中の押収物のすべてを、速やかに返還するよう要請するものである。

本要請に対する貴県警の対応について、10月19日午後5時までに回答されたい。

ところが、それに対する10月19日付岐阜県警の回答は、「平成27年10月15日付け要請については、現に捜査中の事件であり、捜査に関する事柄については、回答いたしません。」という木で鼻を括ったようなものだった。

「まだ捜査中」だと言いたいのだろうが、一体何の捜査をやっているのか。

昨日、捜査が行き詰ったためか、別件の容疑で全くデタラメな捜査を行っていることを赤裸々に示す事実が明らかになった。

徳雲会の診療所に昨年まで勤務していた医師が、理事長、院長らから告訴されていた軽微な事件があった。告訴した側もその内容をよく覚えておらず、我々弁護人にも全く知らされていなかったが、岐阜県警は、その事件を1年半近くも放置していたのに、告訴人側に全く知らせることもなく、10月に入って、その事件で医師の自宅や実家まで捜索し、使用しているパソコンやタブレットなどを押収した上で、被疑者として呼び出して取り調べることでプレッシャーをかけ、その後で、徳雲会の診療所で何か不正が行われていなかったか、具体的な事実を聞き出そうとしたのである。この期に及んでも、押収している大量のカルテの中から、何とかして犯罪のネタを引き出そうとしているのであろう。

警察の非道なやり方に恐怖を覚えた医師が、私の事務所に連絡してきたことから、警察の不当な捜査を把握するところとなった。

軽微な事件については、ただちに示談で解決し、昨日、告訴取消書を警察署に提出した。そして、警察が、事実を歪曲するような供述調書を作成していた点については、医師から正しい事実関係を述べた陳述書の作成提出を受け、徳雲会の事件を捜査する岐阜県警生活環境課に写しを提出し、担当課長らに厳重に抗議した。

数千点のカルテを含む膨大な書類の押収を不当に継続し、捜査の見込みが全く立たない状況で、別件の捜査と称して、徳雲会側が告訴している事件まで引っ張り出して、このような悪辣なことをやっているのが岐阜県警なのである。

ここまでくると、もはや「権力ヤクザ」の所業と批判されてもやむを得ないであろう。

岐阜県警は、そのような無駄な抵抗を直ちにやめ、違法・不当な捜査について謝罪し、事態を収拾すべきである。

ラグビーでは、タックルされて倒されてもボールを離さない「ノットリリースザボール」は重大な反則行為だ。診療に不可欠な大量のカルテを押収し、弁護人側からの攻撃でボロボロになりながら、いまだにカルテを抱え込んで離さない岐阜県警のやり方は、「ノットリリースザボール」の反則そのものであり、社会に対する重大な背信だ。

 

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診療所違法捜査、岐阜県警の許し難い「ノットリリースザボール」 への3件のフィードバック

  1. Motohiko Endou より:

    「ノットリリースボール」は司法をも含む行政の「得意技」です。行政と言う一括りにするなら、小職が相対して争っている、公共工事発注者である相模原市も同じ愚を犯し続けています。当該事件の公共工事請負契約において、発注者である相模原市が、工事契約条件の要とも言うべき、入札公示時に工事に使用出来ると約束していた工事用通路を、発注者の同じ発注工事で、工事契約日前に消失させていた事実を知りながら、工事契約日から現在まで、請負者である原告のみならず、裁判所に対しても、消失事実は知らなかったし、着工後しばらく存在していた、と噓を言い続けています。本件工事契約日の平成23年5月27日以前の、同年5月26日に工事用通路の地盤を相当量掘削された状況を写真に撮り、月毎に工事進捗を被告相模原市に報告している工事進捗状況報告書に
    日付と共にその写真を載せた資料(事実証拠)が有りながら、しかも写真が撮られた同日に被告相模原市の監督員が現地状況を確認したという「工事監督員記録」という被告側が提出した証拠にその事実が記載されているにもかかわらず、相模原市と言う腐った行政は、己が過失と怠慢を認めず責任逃れを続けています。原審では敗訴となりましたが、続く控訴審ではこの事実と新たな証拠を用いて控訴審裁判官が「黒を黒」と言わざるを得ないように、努力するつもりです。株式会社 拓建 代表清算人 遠藤 元彦 相模原市との訴訟公開記録http://blogs.yahoo.co.jp/motoendou12345678/folder/1100444.html

  2. 時の行者 より:

    愛知県在住の農家7年生(H20まで遺伝子組み換え作物対象の除草剤のビジネスユニットの勤め人)。この手の案件では、「レギュラトリーサイエンス」というキーワード(H23閣議決定の施策:最新の科学技術(社会科学を含む)と現行法規・規制・行政行為等との間にギャップがあればそれを埋めて社会が問題なく機能するようにさせる施策)が機能してないのが問題です。この言葉を十分理解して業務に当たらなければいけない地方行政の担当は殆ど知らないキーワードです(サッカーでオフサイドのルール知らない人が審判の旗持って試合をコントロールするようなもの)。公害の対応、エイズを拡散させた非加熱製剤の問題、原発問題(国・地方)、産廃の安全性確保等に共通するキーワードです。まだ、農薬、医薬、産廃の危険物質の扱い等化学物質の分野でしか普及してない言葉ですが、建築・土木業界でも普及し始めたらパニックが発生します。

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