大坪元特捜部長逮捕・起訴は、検察組織の重大な不祥事・歴史上の汚点

昨日(平成25年7月17日)、大坪弘道元大阪地検特捜部長、佐賀元明元大阪地検特捜部副部長に対する犯人隠避事件の控訴審第2回公判が、大阪高裁で開かれ、佐賀氏の被告人質問に続いて、両被告人の弁護人が弁論を行って結審した。判決は、9月25日に言い渡される予定だ。

控訴審公判をめぐる状況については、控訴審で「立ち往生」する検察~明日から元特捜部長控訴審公判控訴審での大坪氏の弁護人としての私の主張については、大坪元特捜部長控訴審第1回公判での弁護人陳述で詳しく述べている。

私は、大坪氏の弁護人として行った弁論を、以下のような言葉で締めくくった。

本件は、最高検察庁も含め、検察の組織としての決定によって、中央官庁現職局長村木厚子氏を逮捕・起訴し、有罪論告を行った事件で、一審無罪判決が出された上、控訴も断念せざるを得ないという、前代未聞の失態を犯したのに加えて、同事件の捜査の過程での大阪地検現職検察官による証拠改ざん問題が新聞報道で表面化したため、最高検が、同検察官を即日逮捕して直接捜査に乗り出したものの、その後も更に拡大激化する検察批判に狼狽・恐怖し、特捜部長の職にあった被告人大坪と副部長の被告人佐賀を、証拠改ざんの犯人を隠避した罪で逮捕・起訴して斬り捨て、本来、検察が組織全体として負うべき責任を、大阪地検特捜部長以下に押し付けて回避しようとした事件である。

最高検は、現職検察官による証拠改ざんという前代未聞の不祥事に対して、検察の組織としての対応が遅れたのは、特捜部長らが、上司・上級庁に対して、その事実を隠ぺいしたためであるとのストーリーを作出し、それを証拠改ざん事件の犯人隠避事件として刑事事件化した。

当初の被告人両名の逮捕・勾留事実とされた「捜査(検挙)の不作為」に関しては、そもそもその前提となる作為義務がないという重大な問題があり、起訴の段階で追加された上司への虚偽報告という「作為の犯人隠避」に関しては、虚偽報告の主犯者とされた被告人大坪に、その前提となる証拠改ざん行為についての確定的認識があったとは認められないという証拠上の問題があったにもかかわらず、逮捕・起訴の結論ありきで臨んだ最高検は、十分な検討も行わないまま、拙速に被告人両名を逮捕し、強引に起訴を行うに至った。

一審では、検察官が、被告人佐賀が前田から証拠改ざんの告白を受けたと主張する1月30日の前田佐賀間電話の存在について客観的証拠を提出できなかったために、その電話の有無に争点が絞られたこともあり、上記のような本件公訴事実の構成及び立証に係る重大な問題は殆ど見過ごされたまま、被告人両名に対して有罪判決が言い渡された。

しかし、控訴審に至り、控訴審裁判所の適切な求釈明及び訴訟指揮により、「不作為の犯人隠避」が成立する余地がないことが明らかになったほか、「作為の犯人隠避」についても、前田が故意改ざんの告白をしていることが、被告人佐賀から主犯者とされる被告人大坪に報告された事実がなく、故意改ざんの確定的認識がなかったことが、郷原趣意書・同補充書に加え、既に指摘した被告人佐賀の被告人質問での供述等からも明白となっており、検察官の各公訴事実についての主張・立証は、殆ど崩壊していると言わざるを得ない状況にある。

法律上、証拠上の問題点を無視し、本来刑事事件として立件すべきではない検察の内部的な問題を、無理やり犯人隠避事件に仕立て上げ被告人大坪らを逮捕して組織防衛を図った行為は、「公益の代表者」として公正に権限を行使すべき検察組織にとってその責務を自ら破棄した重大な不祥事であり、まさに、検察史上にも重大な汚点を残すものとの非難を免れない。

原判決は、「組織防衛、あるいは、部下の身を思うなど、組織に身を置く者として、目的だけから見れば一見正当と思われる行為であっても、あくまでも、法令を順守する中で行われるべきであり」、などと、被告人大坪の「組織防衛」を非難している。しかし、その非難は、十分な法律上の検討も行うことなく被告人大坪らを逮捕・起訴することによって「不当な組織防衛」を図った検察にこそ向けられるべきではなかろうか。

そして、公判終了後の記者会見で、大坪氏は、次のようなコメントを読み上げた。

本件控訴審の審理によって、改めて原判決が何らの法的解釈もしないまま根拠のない推認で大坪有罪を導いたまさに結論先にありきの空疎なものであるとともに、最高検による逮捕起訴が確たる証拠もなく、十分な法的検討もなさずに実行された不当かつ極めて杜撰なものであったことの認識を強くするに至りました。

公益の代表者として公正にその権限を行使することを求められ、長い歴史の中でその信頼を築き上げた検察が、組織防衛という自己目的のためになりふり構わずその権力を濫用行使したことに、かつて検察の不偏不党と公正・剛毅にあこがれた者の一人として深い失望と義憤の念を禁じえません。

本件当時、私のとった一連の所為はあくまで検察組織内における危機対応の一環であって、その当否を論ぜられることはあっても、最高検によって犯人隠避罪に問われ法廷に立たされるいわれは全く存せず、かつ自らの検事生命と、検察官としての誇りと、そして家族の平穏な生活を全て犠牲にして、前田検事と運命を共にする理由はどこにも存しません。

高裁において公正、公平な判断がなされることを強く期待します。

大坪氏には、一審で無罪判決が確定し、検察も冤罪を認めた村木厚子氏の事件の捜査を、特捜部長として指揮したことについて重大な責任があることは事実である。その捜査のどこがどのように間違っていたのか、特捜部長としての対応にどのような問題があったのかについて総括・反省しなければならない。その上で、村木氏への謝罪にも真摯に向き合わなければならない。

しかし、これまでの経過、そして、置かれている状況からは、現時点の大坪氏にそれを期待することは到底無理である。

大坪氏は、村木氏の事件の無罪確定とほぼ同時に表面化した証拠改ざんによって、検察への批判が激化する中で、犯人隠避罪で逮捕・起訴され、120日余にわたって身柄を拘束され、その間に行われた村木事件及び証拠改ざん事件の検証からも排除された。本件に関して行われた最高検の検証結果をとりまとめた「いわゆる厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点等について(公表版)」においては、被告人大坪について、「捜査の過程において、大坪部長及び佐賀副部長に対しては、供述調書の写しが届けられ、両名は、その内容を確認していたが、大坪部長は、本件の捜査・処理について、検察官を集めて捜査会議を開くこともなく、佐賀副部長には、実質的な関与をさせず、自ら前田検事から直接報告を受けて指示を与えるなどしており、重層的ないし組織的な検討やチェックをさせていなかった。大坪部長らは、捜査の着手及び処分等の決裁時においても、前田検事に対し、関係者の供述とこれに対応する客観的証拠の有無・内容を対照した資料等を作成させることもなく、また、主要な証拠物の報告や提示を求めることもなかった。また、大坪部長は、かねて、特捜部所属の検察官が消極的な意見を述べることを好まず、そのような検察官に対し、理不尽な叱責を加えることもあった。そして、決裁官である大坪部長のこのような対応が、部下の検察官に、消極証拠についての報告をためらわせ、ひいては、前田検事が本件FDの問題を大坪部長に報告しなかった要因の一つとなったものと認められる。これらの点からみて、本件における大阪地検特捜部の指導及び決裁の在り方には重大な問題があった。」(検証結果報告書19頁)などと、歴代の大阪地検特捜部長の中でも特異な人物でその個人的資質が一連の大阪地検不祥事であるかのように決めつけている。このような大坪氏の特捜部長としての特異な対応について、大坪氏には全く弁解・反論の余地すら与えられず、直属の副部長の佐賀氏からも、大坪氏と同時に犯人隠避で逮捕されたために、聴取すら行われていないのである。(このような、大坪氏側に全く弁解・反論の機会を与えない最高検の検証のやり方について、2010年12月24日に開催された第3回「検察の在り方検討会議」議事録14ページで、厳しく問題を指摘している)。

そして、大坪氏は、その後、不当な犯人隠避罪による起訴に対する長く苦しい戦いを強いられることになった。

このような大坪氏に、郵便不正事件、村木事件に対して総括・反省することも、村木氏に謝罪することもできないのは、無理からぬところであろう。強引な逮捕・起訴でその機会を奪ったのは、ほかならぬ検察なのである。

こうして、検察が、強引な大坪氏・佐賀氏の逮捕・起訴で組織防衛(当時の検察幹部の保身)を図り、検察の在り方を抜本的に見直し、反省することを回避した結果が、現在もなお続く、検察の信頼崩壊の状況である。

陸山会事件での「検審騙し」による小沢氏強制起訴の画策の首謀者と目される当時の特捜部長の佐久間氏が前橋地検検事正に栄転したことからも、検察に、この不祥事について真摯に反省する意思が全くないことは明白となった。田代元検事による虚偽捜査報告書作成事件に関して検察審査会の不起訴不当議決を受けて行われている再捜査も、近く、参議院選挙のドサクサに紛れて、再度の不起訴という結末で終わらせようとしているのであろう。

大阪地検不祥事については、大坪氏・佐賀氏の対応を無理やり犯人隠避の刑事事件に仕立て上げることで、東京地検の陸山会事件不祥事については、「ごまかし」「詭弁」だらけの「最高検報告書」を公表することで(拙著【検察崩壊~失われた正義】)、組織としての責任を回避した検察という組織には、もはや自浄能力が全くないことは明らかである。

社会常識から逸脱した検察による「不当な組織防衛」に対して、最後の拠り所である裁判所による健全な常識に基づく判断が下されることを期待する。

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弁護士
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