大阪地検をめぐる事件、特別公務員職権濫用罪の成立は明白

10月21日、大阪地検をめぐる事件について、大坪前特捜部長及び佐賀前副部長が犯人隠避罪で起訴された。今後の最大の課題は、既に起訴されている前田元検事による特別公務員職権濫用の事実について捜査を尽くすことである。

前田元検事の行為が特別公務員職権濫用に該当するか否かに関しては、村木氏を逮捕・勾留した行為が「職権濫用」と言えるかが問題になるが、以下の理由により該当することは明らかである。

前田元検事が村木氏逮捕を検討し、関連する証拠関係を上司、上級庁に報告し、検察庁内で逮捕への了承を得たと考えられる平成21年6月上旬頃の時点で、関係者の供述からは、村木氏から上村氏への不正な証明書作成の指示があったとすれば6月8日以降としか考えられなかった。一方で、上村氏の自宅から押収されたフロッピーディスク内に残っていた本件証明書の文書データの最終更新日が6月1日午前1時過ぎとなっており、同時期に同文書の作成が終了したと認められ、同文書の作成を村木氏が指示したとすればその時期は5月31日以前としか考えられなかった。そのため、虚偽公文書作成についての村木氏の共謀すなわち同氏の上村氏に対する文書作成の指示に関する関係者供述は、客観的証拠と矛盾しており、その時点で得ていた証拠関係すべてを総合すると、村木氏の共謀は立証困難で、有罪の見通しはほとんどなかった。

前田元検事はこのような証拠関係の矛盾を十分に認識していながら、同フロッピーディスクのデータの存在を報告文書に記載せずに秘匿し、証拠関係の矛盾を隠蔽して、上司及び上級庁の決裁ないし了承を得て村木氏を逮捕した。このような行為が、検察庁法4条により「公益の代表者」と位置づけられ、「裁判所に法の正当な適用を請求」することとされている検察官の職務として許される余地がないことは言うまでもない。

そこで、前田元検事は、最終的に、フロッピーディスクの更新日データという客観的な証拠が有罪立証の決定的な障害になることを恐れ、パソコンソフトを使用して最終更新日を改竄する行為に及んだものである。それが、上記のような有罪立証が困難な証拠関係であることを秘して決裁・了承を得て村木氏を逮捕・勾留した行為を隠蔽すること、無実の村木氏を罪に陥れることを目的とするものであったことは明らかである。

前田元検事は、上記フロッピーディスクの最終更新日データの改竄行為について、最高検察庁に証拠隠滅罪で逮捕され、本年10月11日に起訴されたが、その際の最高検側の説明によれば、「他の証拠から立証可能と考えていたが、嫌な証拠、マイナス証拠で公判が紛糾することは避けたいという思いから改ざんした。マイナス証拠で即無罪とは思っていなかった」と供述しているとのことである。これは、特別公務員職権濫用罪の嫌疑に対する弁解と考えられるが、「他の証拠から立証可能」というのは、一体どのような立証が可能だという意味であろうか。村木氏が虚偽の証明書作成を指示したことをいかに多数の関係者が供述していたとしても、フロッピーディスクの最終更新日データという客観的証拠と矛盾している限り全く無価値なものであり、そのデータを改竄、隠蔽等しなければ有罪立証が困難なことは明らかである。

公判段階において正確なフロッピーディスクの最終更新日データを記載した捜査報告書が村木氏の弁護人側に開示されてしまったことで上記証拠関係の矛盾が明らかになった後に前田元検事を含む検察官側が行った論告で『6月1日未明に、いったんは「平成18年5月28日」という作成日付が入力されたデータを作成しながらも、現実の公的証明書の発行については、必要な審査資料の提出がなかったことから、やはり逡巡していたところ、その後、被告人からの指示等で背中を押されて公的証明書を発行するという最終決断に至った』という証拠に基づかない不合理極まりない主張を行っているが、このような主張を行わざるを得なかったことも、証拠の矛盾を解消して有罪立証を行うことがもともと困難であったことを裏付けていると言うべきである。

前田元検事は、証拠改竄の目的について「公判を紛糾させたくなかった」と述べているが、フロッピーディスクのデータを含めすべての証拠関係が明らかになれば、「公判の紛糾」程度では収まらないことは明らかであり、目的が、その存在が明らかになると有罪判決の重大な支障になるフロッピーディスクのデータという客観証拠を隠蔽することで、有罪判決を得ようとすることにあったことは明らかである。

最高検が会見で明らかにした前田検事の特別公務員職権濫用に対する弁解と思える供述は明らかに不合理であり、同罪で捜査をしない理由は見出し難い。無実の村木氏を逮捕・勾留し、150日以上にもわたって身柄拘束を継続したことの責任は、被疑者、被告人やその関係者が、罪を免れたり、免れさせたりする目的で行われる行為を想定している証拠隠滅罪(懲役2年以下)のレベルをはるかに超えるものである。前田元検事の特別公務員職権濫用についての捜査を尽くし、それを許してしまった検察の決裁システムをめぐる問題を解明することが、今回の事件を全面的に解決し、検察に対する国民の信頼を回復する唯一の道である。

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